電気化学療法

当院では、犬や猫の腫瘍治療における新たな選択肢として、電気化学療法(ECT)を導入しています。ECTは外科手術や放射線治療が難しい症例、あるいはこれらの治療の補助として、高い効果が期待されている治療法です。
1.電気化学療法とは?
電気化学療法は、特定の抗がん剤と電気パルスを組み合わせる局所的な治療法です。
電気化学療法(ECT)は、特定の抗がん剤と電気パルスを組み合わせた治療法です。ECTの最大の特長は、抗がん剤の効果を劇的に高める点にあります。使用する主な抗がん剤は、ブレオマイシン(主に静脈注射)やシスプラチン(主に局所注射)で、これらを通常の化学療法よりも低用量で投与します。腫瘍部位に特殊な電極を設置し、短時間(100マイクロ秒程度)の高電圧電気パルスを与えると、電気パルスによりがん細胞の細胞膜に一時的かつ可逆的な穴が形成されます。この現象を「エレクトロポレーション」と呼びます。この穴を通じて抗がん剤ががん細胞内に大量に取り込まれ、抗がん剤の効果が通常の数倍(最大5000倍)に飛躍的に高まります 。これにより、がん細胞が効率的に破壊されます。ECTは犬、猫、馬、ヒトにおいて、高い治療効果が報告されており、特に初期段階の悪性黒色腫や皮膚扁平上皮癌、肥満細胞腫などで顕著な効果が期待できます 。
2.ECTの主なメリットと特徴
低侵襲性・低負担: 手術に比べて体への負担が少なく、高齢動物や持病のあるペットにも適用可能です。麻酔時間も手術や放射線治療よりも短時間(通常20~30分)で済みます。
副作用が少ない: 使用する抗がん剤の投与量が通常の化学療法の数分の一以下で済むため、全身への影響が軽微です。
アブスコパル効果: 抗がん剤による直接的な効果だけでなく、抗腫瘍免疫の活性化により、ECTが届かない部位の腫瘍や転移病巣にも縮小効果をもたらすことがあると考えられています。
臓器温存の可能性: 顔面などに発生した腫瘍に対する使用では、目や耳などの臓器の摘出を回避できる場合があります。
3.電気化学療法が適応となる代表的な腫瘍
ECTは、主に体表、皮下、口腔内など、表在性の腫瘍に対して特に効果を発揮します。逆に体の深部に存在する腫瘍や骨に囲まれた腫瘍にへの効果は低減する可能性があります。
代表的な腫瘍
犬
肥満細胞腫、扁平上皮癌、肛門嚢アポクリン腺癌、軟部組織腫瘍、悪性黒色腫(メラノーマ)、棘細胞性エナメル上皮腫など
猫
肥満細胞腫、皮膚扁平上皮癌、注射部位肉腫(術後補助治療として)など
4.治療の流れ
原則として、外科手術や組織生検により確定診断がされている病変が適応になります。
また治療時に動物が不快感を感じないよう、全身麻酔で実施されます。
1. 抗がん剤投与: 主にブレオマイシン(静脈注射)やシスプラチン(局所注射)などの抗がん剤を投与します。
2. 電気パルスの適用: 薬剤投与後、最適なタイミング(ブレオマイシンの静脈内投与の場合は5~8分後など)を見計らい、特殊な電極を腫瘍部位に設置して短時間の電気パルスを与えます。
5.治療時間と回数
実際の処置時間は20~30分ほどと短時間です。通常、腫瘍の種類や反応に応じて、数週間ごとに2~3回ほど実施されます。
電気化学療法が最適な治療法であるかどうかは、腫瘍の種類、大きさ、ペットの全身状態によって異なります。当院では、獣医師が十分に評価を行い、治療計画をご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。




























